納棺で準備するものと手順は?
納棺(のうかん)とは、亡くなった方を棺の中に納めることをいいます。
その際、身なりを整え、旅立ちの支度をする一連の行為を、儀式として行うものが「納棺の儀」です。
納棺の儀では、近親者が集い、故人の身支度を手伝ったり、愛用していた品を棺に納めたりします。
故人と同じ時間と空間を共有できる、かけがえのないひとときとなるでしょう。
近年では、納棺の儀をひとつの儀式として位置づけ、**オプション(別料金)**として提供する葬儀社も増えています。
納棺の儀が行われるタイミング
納棺のタイミングは、ご安置の場所や方法、安置期間、故人のお身体の状態などによって異なります。
たとえば、
- 安置期間が長くなる場合
- ご遺体の状態に配慮が必要な場合
このようなケースでは、比較的早い段階で納棺を行うことがあります。
また、安置場所によっては、棺に納めた状態でなければ安置できないこともあり、ご逝去後すぐに納棺する場合もあります。
一方、納棺の儀は、親族が集まりやすい時間帯を選んで行われます。
以前は通夜の前や、一日葬では葬儀・告別式の前に行われることが一般的でしたが、近年はご家族の都合や会場の状況に応じて、柔軟に対応するケースが増えています。
納棺の儀に用意するもの
■ 死装束(しにしょうぞく)
納棺の儀に必要な葬具は、宗教・宗派に沿って葬儀社が準備します。
進行や作法についても、当日ひとつずつ説明がありますので、心配はいりません。
仏式(浄土真宗を除く)では、白い仏衣である死装束に着替えるのが一般的です。
死装束は、浄土へ旅立つ僧侶の姿を表したもので、「冥途への旅支度」ともいわれています。
仏衣ではなく、生前愛用していた服の着用を希望する場合もあります。
ただし、しきたりや慣習を大切に考える方もいますので、事前に周囲の理解を得ておくと安心です。
なお、死装束を着たうえで、その上から愛用の服を添えることで、故人らしい姿でお別れすることもできます。
■ 副葬品(ふくそうひん)
納棺の際には、故人の愛用品などを棺に納めることができます。
ただし、入れてよいもの・避けるべきものがあります。
入れてはいけないもの
◎ 眼鏡・結婚指輪・腕時計など
金属製品やガラス製品など、不燃物に分類されるものは入れられません。
◎ 紙幣・硬貨
かつては三途の川の渡し賃として硬貨を納める風習もありましたが、現在は火葬が主流です。
硬貨は不燃物であるうえ、損傷させると「貨幣損傷等取締法」に抵触する可能性があります。
そのため、現在は六文銭を模した紙を納めるのが一般的です。
紙幣についても、燃やすことに抵抗を感じる方が多いため、避けたほうがよいでしょう。
◎ ゴルフクラブ・釣り竿・ラケットなどのカーボン製品
カーボン素材は燃えにくく、微細な炭素繊維が火葬炉の設備に影響を及ぼすおそれがあります。
◎ 革靴・革手袋・レザージャケットなどの皮革製品
皮革製品は燃焼に時間がかかり、火葬の妨げになることがあります。
◎ スイカ・メロンなど水分の多い食べ物
大きく水分を多く含む食べ物は燃焼の妨げになります。
入れる場合は一口大に切るなどの工夫をします。
紙パックの飲み物や瓶・缶のお酒も、そのまま入れるのは避けましょう。
◎ 辞書・辞典・アルバムなど厚みのある書籍類
厚みのある書籍は燃えにくいため、入れる場合は分冊にしたり、一部のページに限るなどの配慮が必要です。
■おすすめの副葬品
◎ 故人への手紙
感謝や思い出を綴った手紙は、よく選ばれる副葬品です。
折り紙にメッセージを書き、鶴や花に折って納める方もいます。
◎ 愛用の服や小物
生前よく身につけていた服、スカーフ、ひざ掛けなどもおすすめです。
■写真は入れてもいい?
「寂しくないように」と、家族や友人、ペットの写真を納めることもあります。
写真を入れること自体は可能ですが、「生きている方の写真は控えたほうがよい」と考える人もいます。
そのため、写真に写っている本人や関係者の同意を得ておくと安心です。
納棺の手順
1.ご遺体の身支度を整える
亡くなった方には、白い着物を着せる慣習があります。
お遍路さんの装いに似た白装束で、通常は葬儀社が用意します。
地域によっては、お遍路で使用した帷子(かたびら)や、近親者が縫ったものを着用する風習もあります。
2.死装束を身につける
白い装束を着る場合、襟合わせは通常とは逆の左前にします。
上帯を締め、手甲・脚絆をつけ、足袋を履かせます。
結び目は「縦結び」とし、結び目が縦になるようにします。
地域によっては、着物を裏返して左前に着付ける風習が残っているところもあります。
3.旅支度を整える
三途の川の渡し賃として、紙製の六文銭を頭陀袋に入れ、首にかけます。
頭には編み笠や、天冠(頭巾)と呼ばれる白い三角の布を用いますが、
顔の印象が変わるため、身につけずに棺の中に納めることも多くなっています。
4.副葬品を納め、棺の蓋を閉じる
旅支度を終えたら、副葬品を納め、棺の蓋を閉じます。
納棺の際には、死化粧と呼ばれるメイクを、ご家族と一緒に行うこともあります。
特別な化粧ではなく、ヒゲや産毛を整え、生前の面影に近づけるためのものです。
ご遺体の状態によっては、「ラストメイク」などの専門的な技法が用いられることもあります。
